時々思う。何故俺はあれに惚れているのだろう。
 惚れた方が負けなのだとは解っていたが、ヴァンツァーはどうしても思わずにはいられない。
 ため息混じりに今日も彼女の自室を訪れると、半開きの扉の向こうから、押し殺した声が聞こえてきた。

「限界なんだろ?」
「……うん」
「俺も、そろそろ潮時だと思うぜ。本当のことを教えてやるべきだ」
「……」
「このまま続けば、傷つくのはヴァッツの方なんだぜ?」
「分かってる、けど……」
「なら尚更、姉さんの口で言わなきゃ駄目だ。大丈夫。あいつもきっと分かってくれる」
「……レティシア……っ」
「姉さんもヴァッツも、誰も悪くなんかないだろ。ただ、最初の一歩が食い違っちまっただけなんだよな?」
「……でも、だからって、どうしたらいいの……?」



「――ッ言えないよ! 男よりも女の人が好きだなんて!」






「ご、ごめんねヴァンツァー?」
「……」
「ちょっとからかうつもりが、そこまで本気にすると思わなくて」
「……」
「だからそんな、いつまでも隅っこで拗ねてないで……あぁもう! レティシアも腹抱えてないで少しは手伝えこの馬鹿!!」





 口を聞いてくれるまで一日かかりました。
 最近彼の立ち位置とかを勘違いしている気がします。

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